賃貸物件に引っ越しする時、特定優良賃貸住宅を選ぶという選択

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前回は、UR賃貸住宅について、特徴やメリットデメリットなどをご紹介しました。

UR賃貸住宅については、賃貸物件に引っ越しする時、UR賃貸住宅を選ぶという選択をご覧ください。

今回は、あまり聞きなれない言葉かも知れない「特定優良賃貸住宅」について、特徴やメリットデメリットなど解説していきます。

賃貸物件に引っ越しする時、特定優良賃貸住宅を選ぶということ

特定優良賃貸住宅とはどういうもの?

特定優良賃貸住宅は、通常略して「特優賃(とくゆうちん)」と呼ばれています。また、東京都では「特優賃」を指して「都民住宅」と特別に呼んでいます。

特定優良賃貸住宅とは、住宅供給公社もしくは国や地方自治体の認定を受けた事業者が建設し、世帯の所得に応じて、契約家賃との差額の一部を、国や地方自治体が補助してくれる、ありがたい制度です。

結果、あなたが支払う時は、相場より安い家賃となります。

前回のUR賃貸住宅の場合は、UR賃貸住宅を取り扱っている「UR専門の店舗」へ行かないと内覧や各種契約手続きが行えませんでした。

しかし、今回の特優賃の場合は、一般の不動産屋でも取り扱いがある点が異なります。

例えば、契約家賃(本来の家賃額)が10万円で、国などからの家賃補助分が2万円出るとすると、

家賃補助分の2万円は、大家さんに直接支払われ、契約家賃から家賃補助分を引いた分(差額)の8万円を入居者が大家さんに払うというものです。

UR賃貸住宅では、「都市再生機構」という独立行政法人がオーナーだったわけですが、

特定優良賃貸住宅では、様々なタイプがあり、公社施行型、公社借り上げ型、法人管理型、東京都施行型などがあります。

参考:東京都都市整備局「都民住宅に関するQ&A」

特定優良賃貸住宅の特徴

何と言ってもすごいのが、最長で20年の家賃補助(但し、あなた自身に対してではなく、物件として認定から最大20年)が受けられるという点です。20年ですよ。

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しかし、補助の額は、毎年下がり続けるので、逆に入居者の負担は毎年少しずつですが、上がっていきます。(この負担額増加率は、各自治体によってまちまちです。)この場合を「傾斜型」と呼びます。

但し、最近では、補助額が変わらない「フラット型」を採用しているケースも増えてきています。

なお、共益費や駐車場代などを除く、基本家賃の部分のみに対する補助となっています。

特定優良賃貸住宅を借りるメリット

その1.初期費用が安い

前回紹介したUR賃貸住宅と同様、特定優良賃貸住宅を借りる際の最初のメリットは、入居時の初期費用の安さが上げられます。

入居時に初期費用として掛かるのは、敷金1~3か月分と前家賃、共益費だけ。その他の礼金、不動産仲介手数料が不要です。

さて、この月額家賃8万円の物件で、通常の民間賃貸物件と特定優良賃貸住宅で初期費用の差がどれだけ出るか計算してみます。

なお、鍵の交換費用や火災保険料は同等と考え、比較対象から外します。

【民間賃貸物件の場合】

通常、敷金2か月分、礼金2か月分、不動産業者への仲介手数料1か月分、前家賃1か月分として計算すると、

月額家賃8万円×全部で6か月分=48万円が初期費用として掛かります。

【特定優良賃貸住宅の場合】

初期費用として掛かるのは、

敷金2か月分、前家賃1か月分なので、全部で3か月分

月額家賃8万円×全部で3か月分=24万円

礼金2か月分と不動産業者への仲介手数料1か月分が不要なので、初期費用は通常の賃貸で借りる場合の概ね半額に抑えることが出来ます。

この差はかなり大きいです。

その2.契約更新料が不要

一般的な賃貸物件では、2年毎に契約更新があり、その際は更新料として、家賃1か月分が掛かります。

しかし、特定優良賃貸住宅では、更新料は不要となっています。

その3.様々な一定以上の建築基準を満たしている優良物件である

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①1世帯当たりの専有面積が約60㎡以上で、2LDK~3LDKが中心である。但し、この数値は都市部や地域により、多少差があります。

②専有面積のうち、9%以上の収納を確保している。

③耐火構造もしくは準耐火構造である。

④天井高さは2.3m以上

⑤極力段差が無いように、バリアフリー設計になっている。お風呂やトイレ、廊下などに手すりが付いている。また車いすが通れるように廊下の幅が通常の物件より広くなっている。

このように、様々な基準に基づき建てられているので、一般の賃貸物件と比べると、高品質で快適な暮らしが送れる物件であることが特徴です。

その4.高品質な優良物件に周辺相場よりも安い家賃で住むことが出来る

家賃補助が出るので、周辺相場より結構安くなり、相場10万円前後の物件で通常より1.5~3万円程度安い家賃で借りられるはずです。但し世帯所得や子供の人数による。

特定優良賃貸住宅を借りる(探す時の)デメリット

その1.原則単身者では入居できない

そもそも、中堅所得者のファミリー向けに、2LDK~3LDKぐらいの広めの部屋に、設備を充実させて作られているので、単身者用の間取りの物件はまずありません。

そのようなことから、単身者は入居できないと思っておいた方がいいでしょう。

但し、一般的な特定優良賃貸住宅ではなく、満60歳以上の人を対象としている「高齢者向け」特定優良賃貸住宅では、単身者でも申し込むことができます。

その2.所得基準が設定されている

photo credit: Japanexperterna.se Japanese Yen Bills via photopin (license)

先にお話ししたように、中所得者向けということで、申し込むに当たっては、「所得基準」をクリアしなければなりません。

各都道府県により多少異なりますが、東京都の場合は、概ね世帯年収278~911万円ぐらいまでの家庭が該当します。但し、世帯人数によっても額は変動します。

参考:JKK東京(東京都住宅供給公社)「世帯の所得金額の算出」

なお、高額所得であればあるほど、家賃補助額は減額されます。

その3.特定優良賃貸住宅の認定期間は20年と期限付き

特定優良賃貸住宅は、認定を受けてから20年間の期限付きです。

20年が過ぎたのちは、普通の一般賃貸物件と変わらなくなります。

その4.申込み基準は?

主な申込み基準
・申込者が成人である(婚姻済みであれば未成年でも可)
・入居者全員が日本国籍を有しているか、外国人登録を受けている者で同居予定の親族がいること(単身者は原則不可)
・自らが入居するために借りたい(持ち家がある場合は原則不可)
・連帯保証人が立てられること
・住民税を滞納していないこと
・収入基準に合致していること

その5.家賃補助の金額は収入額によって変動

先に、説明した所得基準とも関わってくるのですが、同じ人でも収入の変動により、補助金額が毎年変わるので、所得が証明できる書類の提出が毎年必要です。

但し、極端に収入が増加した場合でも、それに合わせて負担額が急激に上昇することはなく、段階的に変化していきますが、所得基準上限を超えると、家賃補助の対象から外れることになってしまいます。

その6.人気が高く、入居は抽選となることも

このような家賃優遇のメリットがある為、人気の制度となっている「特定優良賃貸住宅」。そのため、申し込んでも申し込み倍率が高く、抽選になることも多いので必ずしも入居出来るとは限りません。

他の一般物件と同時並行で物件探しを進める必要があり、少々手間が掛かってしまいます。

最後に

今回ご紹介したように、メリット、デメリットそれぞれがあるのは、どんな物件でも同じです。

特定優良賃貸住宅の場合は、最大のメリットとも言える初期費用の安さと、その後認定から20年の長きに渡り、割安な家賃で、高品質の物件に住めることです。

UR賃貸住宅より知名度は低く、あまり知っている人の少ない「特定優良賃貸住宅」でしたが、所得基準の部分だけクリアすれば、UR賃貸住宅よりは入りやすいかもしれません。

私も結婚してすぐぐらいの時期に、「特優賃」利用させてもらいました。それまで「特優賃」の存在を全く知らなかったのですが、不動産屋の人がたまたま薦めてくれたのがきっかけでした。

払っている家賃の割に、リビングも広く、お得でいい物件だったなぁという思い出が残っています。

皆さんも是非探してみて下さい。

特定優良賃貸住宅探しは、各都道府県の都市整備局もしくは、以下の住宅供給公社のホームページなどから探すことができます。

東京都住宅供給公社「JKKねっと先着順あき家検索」

大阪府住宅供給公社「特定優良賃貸住宅」

福岡市住宅供給公社「賃貸住宅(特優賃など)」

についてです。

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