賃貸契約、関東の敷金/礼金とは違う、関西の保証金/敷引き制度とは?

Q&A
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前回は「新大学生(専門学生)向け、初めての一人暮らしで引っ越しする際のコツ」と題してお送りしました。

新大学生(専門学生)に限らず就職などで、地元から一歩足を踏み出すと、知らない土地では地域ごとに違った習慣もあり、驚くことも多々あります。

私が、その昔関西の友達から、その掃除機「なおしといて」と言われ、え、どっか壊れているの?と思ったのですが、関西弁では「修理するの直す」ではなく、「片付けておいて」という意味だということはその時初めて知りました。

引っ越しにおいても、このようなことはあります。

関東では、賃貸物件の契約時に支払わなければならないお金に、主に「敷金」と「礼金」の2種類があるのですが、どうも関西以西では違うようなのです。

関西以西では「保証金」と「敷引き(しきびき)」という仕組みなんだそうです。

今回は、関東(東日本)地方から、関西以西(西日本・九州)に引っ越しする時に、理解するのに困る用語「保証金」と「敷引き(しきびき)」について解説します。

関東とは違う、賃貸契約時の関西以西の「保証金」と「敷引き(しきびき)」について

関東(東日本)と関西(西日本)、明らかに違う文化圏だということは、お互いに交流したことが有る人には、言わずとも分かるでしょう。

これが物件の賃貸契約を結ぶ際も違うのです。

関東など東日本の「敷金」と「礼金」

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関東など東日本では、

【敷金】:一種の保証金のようなもので、家賃の滞納があった時の担保や、退去時に損傷があった時の修繕費に充てられるお金。問題が無ければ基本的には全額返還されるもの。通常家賃の1~2か月分

【礼金】:大家さんへのお礼金の為、戻ってこないお金。通常家賃の1~2か月分

敷金の発祥は江戸時代だそうですが、礼金の発祥は、1923年に発生した関東大震災後、家屋の倒壊や火災などにより住宅が圧倒的に不足していた時代に、優先的に自分に家を貸してくれたお礼として始まった習慣(これには諸説あります。)が、現代の家余りの時代に於いても続いています。

ですから、関東(東日本)の風習なわけです。

なお、敷金については、これまで法律による定義はされていませんでしたが、2017年6月に公布された民法の債権法改正により、きちんと明文化されました。実際の法施行は、2020年4月1日からです。

この中で、「賃貸借終了時のルールの明確化」がなされ、敷金の返還時期と返還の範囲が明確化されました。

また、それに伴い「原状回復」についても明確化されました。

出典:法務省ウェブサイト「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-22.賃貸借に関する見直し」

関西など西日本の「保証金」と「敷引き(しきびき)」

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なぜか関西の中でも、京都と滋賀の一部では適用されていない「保証金」と「敷引き(しきびき)」制度とは、どういったものでしょうか?

【保証金】:意味合い的には、関東の敷金とほぼ同じで、最初に貸主に預けるお金で、敷金同様、家賃の滞納や現状回復が必要な時に使われるお金です。

但し、関東の敷金と違い、家賃の3~6か月(中には6~8か月という場合も)と高額な初期費用が掛かり大きな負担となります。

【敷引き】:「敷」と付いているため、「敷金」と混同しがちですが、意味合いとしては、金(=保証金)から引かれるお金だから、「敷引き」と覚えておけば間違いないでしょう。

しかし「敷引き」は、関東で言うクリーニング代や原状回復費を指していると思いがちですが、ここに落とし穴があり、賃貸契約書に初めから「一定額の敷引き」される費用が記載されている場合がほとんどです。

この「一定額の敷引き」には、「部屋の使い方いかんに関わらず引く」という特徴があります。

しかし、ここで思い出してください、関東では最初に払った「礼金」というものが関西など西日本では無いことに。

すると、この敷引きの中に「礼金」が含まれていると考えると腑に落ちるのではないでしょうか?

「礼金」の部分が「先払い」なのか「後払い」なのかの違いだと。

敷金・礼金の場合と、保証金・敷引きの場合での費用シミュレーション

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同じ家賃8万円の物件で敷金・礼金の場合と、保証金・敷引きの場合で、最終的な費用がどう違うか考えてみましょう。

関東など東日本で、敷金2か月分、礼金2か月分だとした場合

最初に払うのは、家賃の合計4か月分

家賃8万円×(敷金2か月分+礼金2か月分)=-32万円(出費)

退去時に、敷金は全額戻ってくるとすると、

退去時に家賃8万円×敷金2か月分=16万円が返還(入金)されると、

最終的な損益は、-32万円+16万円=-16万円(礼金分)となります。

関西など西日本で、保証金3か月分、敷引き2か月分だとした場合

最初に払うのは、家賃の3か月分(保証金)だけ

家賃8万円×保証金3か月=-24万円(出費)

退去時に、敷引き2か月分が保証金から引かれますが、それは既に払っている保証金から引かれるので、

(24万円-(家賃8万円×敷引き2か月分))=+8万円(返還分)となります。

最終的な損益は-24万円+8万円(返還分)=-16万円(敷引き分)となります。

赤線で引いた部分はどちらも2か月分、礼金であるか敷引きであるかの違いで実質引かれた額はどちらも-16万円なのです。

最終的に、関東の方が16万円と多く返ってきたということになりますが、そもそも最初に支払ったお金の額が違うので当然です。

そして、ここから必要に応じて「原状回復費用」が取られるのは、関東関西どちらも同じです。

ところが、関西流でさらにこの残った少ない8万円の中から、原状回復費が取られると、ほとんど残りが返ってこないこともあり、え?っとなるわけです。

ちょっと仕組みがややこしかったですが、引いている額はどちらも一緒なのです。分かって頂けたでしょうか?

ここ20年ぐらいで保証金、敷引き制度は廃れてきている

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かつては多くみられた「敷引き」ですが、以前から消費者に「分かりにくい」と言われていたり、また2001年施行の消費者契約法に違反するのではないかという裁判例がいくつもあったため、関西圏の不動産業者では急速に、関東式の「敷金・礼金」方式を採用する会社が増えました。

このような背景から、近年では「保証金・敷引き」方式は減少傾向にあり、該当地域でも、対象物件数は全体の10%以下になっているようです。

しかも、現在では関西というよりは九州地方にまだ残る習慣と考えた方がいいかもしれません。

ましてや、現在は少子化の影響もあり、物件数はダブつき気味で、借り手市場となっています。

そんな状況の中、その他多くの物件の中から、自分の物件を借りてほしい大家さんは、敷金・保証金もしくは礼金・敷引きのどちらかが不要、もしくはどちらも不要にして、選んでもらいやすくしています。

先にも紹介したように、礼金とは昔、震災直後で売り手市場だった「賃貸物件不足」の時代に生まれた習慣でした。

しかし、現代21世紀では、物件数がダブつき大家さんは借り手を探すのに苦労しています。そんな借り手市場の現在では、すでに、「礼金・敷引き」という古い習慣がマッチしていないのでしょう。

このまま人口の数と賃貸物件の数の均衡が崩れていくと、10年後、20年後には、

昔はね「敷金・礼金」または「保証金・敷引き」なんて制度があったらしいよ!なんていう昔話が語られることになっているかもしれません。

最後に

以上のようなことを理解し、物件契約時には、必ず「賃貸借契約書」をよく読み、特に「特約事項」に何が含まれているかを納得した上で、物件契約を進めるようにして下さい。

中には、敷引きとは別に、原状回復費用を、通常では損耗の度合いによるところ、あらかじめ「家賃1か月分」と規定している場合もあるので、注意して下さい。

敷金返還については、退去時の掃除と原状回復について。敷金を多く取り戻すコツ。も併せてご覧ください。

についてです。

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