敷金返金トラブル時の切り札。「敷金返還の少額訴訟」を行う方法

住居・不動産関連手続き
mohamed_hassan / Pixabay
この記事は約23分で読めます。

本サイトにはプロモーションが含まれています

前回は、「賃貸物件引っ越し時の退去立会いのコツ。敷金返金トラブルを防ぐために」と題して、どうしたら多くの敷金を取り戻せるかのコツと注意すべき点などについてお伝えしました。

しかし、大家さんや不動産屋の中には、

一方的に法外なクリーニング費用を請求してきたり、貸した側・借りた側双方の見解が食い違い、納得できる「敷金返還」がなされない場合もあります。

このような敷金返金のトラブルは意外にも多く、日本では年間約1万4千件ほど起こっているのが現状です。

引用:独立行政法人国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」

可能な限り、双方の話し合いで解決するのが望ましいのですが、そうも行かない場合は、今回のテーマとなる「敷金返還の少額訴訟」も考えてみてはいかがでしょうか。

おかしい事には「はっきりNOと言う」為に、このような手段も有るという事を消費者の私たちは知っておく必要があります。

今回は『敷金返金トラブル時の切り札。「敷金返還の少額訴訟」を行う方法」』と題して、「敷金返還の少額訴訟」を起こす方法の解説を中心に、状況・段階ごとに取れる方法についてもおお伝えします。

目次
  1. 「敷金返還の少額訴訟」をする前に
    1. 敷金返金までの一般的な流れを確認する
      1. 退去通知(告知)の義務及び通知期限
      2. 退去立会いで、原状回復が必要な部分について確認を受ける
      3. 退去立会いをしない場合や賃貸契約にクリーニング代などが一定額請求されることが記載されていることも
      4. 敷金返金についての請求書や明細書は、退去から約1か月半後に届く
    2. 補修費用の請求書や敷金返金明細書の内容に納得できない場合
      1. STEP1:各都道府県の不動産相談窓口や国民生活センターなどに相談する
      2. STEP2:原状回復にかかる費用の詳細説明や見積もり金額の内訳明細を要求する
      3. STEP3:見積もり金額の内訳明細と賃貸契約内容を照合する
        1. 賃貸契約書の特約事項の確認
        2. 特約事項について、説明を受け、あなたが納得した上で入居したか?
      4. STEP4:貸主である大家さんや不動産業者と交渉する
      5. STEP5:交渉が難航したり、問い合わせに対する貸主側からの返答がない場合は、「内容証明郵便」を送る
  2. 「敷金返還の少額訴訟」に掛かる費用はいくら?
    1. 裁判費用
      1. 「手数料」
      2. 「予納郵券代」
    2. 当事者費用
    3. 裁判所までの交通費など
  3. ここからが本番「敷金返還の少額訴訟」を起こす
    1. 「敷金返還の少額訴訟」とは?
    2. STEP1:訴訟前の準備
      1. 「訴状」の作成
      2. 必要書類の準備
        1. 賃貸借契約書(無い場合は重要事項説明書や更新時の契約書)
        2. 敷金の精算書(原状回復費用の見積書や明細書など)
        3. 内容証明郵便と配達証明記録(事前に郵送している場合)
        4. 入居時/退去時の汚れ・損傷具合などを証明できる写真
    3. STEP2:簡易裁判所に行って「訴状を提出」する
      1. 「管轄」裁判所の場所を確認する
      2. 簡易裁判所に「訴状」を提出する
    4. STEP3:簡易裁判所で「訴状を受理」してもらった後
      1. 原告(あなた)側の対応
      2. 被告(家主)側の対応
    5. STEP4:口頭弁論期日すなわち「裁判を行う日」はどのように行動する?
      1. 裁判開始前(集合時間厳守)
      2. 裁判開始
      3. 和解と判決
      4. 少額訴訟裁判のまとめ
    6. STEP5:判決が出た後日
  4. 最後に

「敷金返還の少額訴訟」をする前に

敷金返金までの一般的な流れを確認する

賃貸物件退去時に敷金返金されるまでには、大きなイベントがいくつかあります。それをまずは順を追って確認しましょう。

退去通知(告知)の義務及び通知期限

通常、賃貸借契約書には賃貸物件から退去するに当たり、退去通知(告知)義務が記載されていることがほとんどです。

その通知期限は、一般的には退去日の1か月前まで(レアな場合でも2か月前まで)となっています。

この告知義務を守らず、退去日まで1か月を切ってからの急な退去通知をすると、違約金を請求される旨記載があるはずです。

この場合、敷金とは別勘定で請求されることもありますが、敷金から引かれることが多いです。

このことをまずは押さえておきましょう。

退去立会いで、原状回復が必要な部分について確認を受ける

一般的には退去日当日(双方の都合が合わない場合は別日になる場合も有)に、家財道具が引っ越し業者によって運び出せれ、荷物が無くなった段階で、あなたが住んでいた部屋の壁柱、台所、風呂場などの各種設備について、著しい汚れや損傷などが無いかを、貸主(大家さんや不動産屋)、借り主(あなた)双方立会いの下、確認します。

その場で、貸主(大家さんや不動産屋)側から、補修・修理や清掃などが必要な部分について、指摘を受けます。

その該当箇所について、あなたの過失責任が有り仕方ないと思えれば問題無いのですが、あなたの過失でない場合や、例えば少しのフローリングの傷に対して、フローリングの全面張替えを要求されるなど、

退去立会い確認結果に納得いかない場合は、確認結果の書面に、サイン又は押印をしないでください。

ここで、サイン又は押印してしまうと、その確認内容に同意したとみなされてしまいます。

また、この段階では、補修などが必要な箇所が明記されているだけで、具体的な金額は記載されていない場合がほとんどです。

稀ですが、大家さんや不動産業者の中には、退去立会い時にクリーニング業者やリフォーム業者も同席させ、その場で見積もり金額を出してしまう場合もあります。

退去立会い時にチェックされる箇所や掃除方法については、以下の記事で詳細に解説しています。併せてご覧ください。

賃貸物件引っ越し時の退去立会いのコツ。敷金返金トラブルを防ぐために

退去時の掃除と原状回復について。敷金を多く取り戻すコツ。

退去立会いをしない場合や賃貸契約にクリーニング代などが一定額請求されることが記載されていることも

orzalaga / Pixabay

賃貸契約の内容によっては、物件の汚れの度合いや損傷内容に関わらず、当初から一定額が敷金から引かれる契約になっている場合も存在しています。

例えば、クリーニング代や壁紙張替え代として、家賃の1か月分が強制的に引かれることが明記されていたり、

一部の関西や九州地方で残る「保証金・敷引き」制度では、敷金が返ってこないこともあります。

「保証金・敷引き」制度については、こちらの記事で詳細をご確認ください。

賃貸契約、関東の敷金/礼金とは違う、関西の保証金/敷引き制度とは?

原状回復や敷金に関する部分については、賃貸契約書の「特約事項」として記載されていることがほとんどです。

退去立会いを受ける前には、あなたが住んでいた物件では、

クリーニング代など退去時の費用負担について、賃貸契約の内容がどうなっているかを把握しておくようにしましょう。

但し、賃貸契約書の「特約事項」も、一般的な原状回復の範囲を超えるような法外な金銭負担を負わせる契約内容である場合は、そもそも「消費者契約法」という法律に違反している可能性が出てくるので、この点を起点に訴訟を起こすことも可能となってきます。

契約書に書かれているからと言って、法外な内容であれば、泣き寝入りせず、戦う姿勢でいくようにしましょう。

敷金返金についての請求書や明細書は、退去から約1か月半後に届く

退去立会いのときに確認された内容を元に、発生する補修費用やクリーニング代、いくら敷金が返金されるのかが書かれた請求書や明細書があなたの手元に、通常、退去(引越し)から約1か月半後までに、郵送もしくは電子メールなどで届きます。

この「補修費用の請求書や敷金返金についての明細書」に書かれている内容を、退去立会い時の「確認結果の書面内容」とよく照らし合わせ、合意した内容と合っているかを確認します。

そこに書かれている補修金額やクリーニング費用、そしてその結果敷金から差し引かれて返金される額に納得出来れば、それで処置してもらう旨、メールで伝えるなり書面にハンコを押して返送すれば、後は、所定の金額が自分の銀行口座などに振り込まれたことを確認して、敷金返還についての処置は完了です。

この「敷金返還」の完了をもって、旧居の賃貸契約に関しての全ての手続きが完了し、ようやくこれで旧居との関りが切れると言えるでしょう。

補修費用の請求書や敷金返金明細書の内容に納得できない場合

congerdesign / Pixabay

前項では、敷金返金までに訪れるいくつかのポイントを紹介しました。今一度おさらいしましょう。

1.退去通知(告知)は、通常1か月前まで(契約内容によっては2か月前までと記載の場合も有)

2.退去日当日(引っ越し日)には、退去立会いを双方立会いで実施。確認結果内容について、双方合意する。

⇒あなたが納得できない場合は、サインをせずに、なぜ補修やクリーニングが必要なのかその場で説明を要求する。

3.補修修繕費用の見積書や敷金返金の明細書が送られてきたら、内容確認する。

⇒あなたが納得できない場合は、金額についての詳細説明を要求する。

これを見ると分かる通り、あなたが「異議を唱える」機会は2回あります。

STEP1:各都道府県の不動産相談窓口や国民生活センターなどに相談する

原状回復義務の部分については、私たち素人では判断が明確に出来ない場合も起こります。

そのような場合は、まずは専門家である各都道府県の不動産相談窓口国民生活センターなどに相談し、あなたのケースではどうなるかアドバイスをもらい、ついでに必要な法律や知識も得て、今後の貸主との交渉を有利に進められるよう「理論武装」しておくようにします。

参考リンク:

国民生活センター「消費者ホットライン」

東京都都市整備局「ようこそ!不動産相談のページへ」

日本司法支援センター法テラス「相談窓口検索について」

STEP2:原状回復にかかる費用の詳細説明や見積もり金額の内訳明細を要求する

未だに補修内容や掛かる金額をどんぶり勘定で一緒くたに記載し、詳細が分からない明細を出してくる大家さんや不動産業者も中には存在します。

まずは、あなたが納得出来ない部分について、なぜその補修が必要なのか詳細の説明を求めたり、費用内訳の明細を出して貰うようにしましょう。

これが第一歩です。

中には明細を見ずとも、それでOKとしてしまう消費者(入居者)もいるため、余計な費用が上乗せされていても気づかず、文句を言わないことから、そのような行為を助長している結果となってしまっています。

明細を確認し、訳の分からない勘定項目や相場より高いと思われる項目については、説明を求めましょう。

STEP3:見積もり金額の内訳明細と賃貸契約内容を照合する

FirmBee / Pixabay

原状回復にかかる費用詳細や見積もり明細書の内容が出たら、この金額と、あなたが退去時に負担しなければならない「費用負担」の部分について、賃貸契約内容に書かれている事項に基づき、照合していきます。

特に気を付けなければならないのが、契約書の「特約事項」です。

そして注意すべき「特約事項」には、2つあります。

賃貸契約書の特約事項の確認

原状回復特約:

1998年に国土交通省が発表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、退去時の原状回復について、

賃借人(脚注:ちんしゃくにん=物件を借りる人入居者である「あなた」)の原状回復義務とは何か

の項目で

「賃借人の通常の使用により生ずる損耗」については、賃借人は原状回復義務がないと定め、賃貸人(脚注:ちんたいにん=物件を貸す人である「大家さんや不動産業者」)が負担することになる。

と明記されています。

参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」

しかし、賃貸契約書の中に、原状回復特約の条項を盛り込み、通常の使用により生じた損耗についても、賃借人(入居者)負担とすることが可能なのです。

敷引き特約:

関東ではなじみがありませんが、関西や九州などの関西以西の一部地域では、賃貸契約の際に、「保証金と敷引き」という制度を用いている場合があります。

この契約形態では、関東で言う敷金に当る「保証金」の中から、退去時に一定額の原状回復費用が差し引くことが規定されています。この敷引き特約も違法ではありませんが、金額によっては納得出来ない場合もあることでしょう。

特約事項について、説明を受け、あなたが納得した上で入居したか?

「原状回復特約」、「敷引き特約」いずれの場合も、特約事項については、入居前の契約時に貸主である大家さんや不動産業者が、具体的な費用負担についての事前説明を行った上で契約を締結するという「重要事項の説明責任」のルールが宅地建物取引業法(略して「宅建法」)に定められています。

もし、重要事項説明を受けず、あなたにとって不利な条件で契約してしまった場合(もしくは、貸主側が意図的にやった場合)、宅地建物取引業法違反で契約自体無効にできる可能性もあります。

STEP4:貸主である大家さんや不動産業者と交渉する

前項で説明した、賃貸契約内容と、原状回復費用の請求額及び内容明細を確認した上で、納得いかない点や疑問点不明点がある場合は、貸主である大家さんや不動産業者と話をして、費用負担及び返還金額について交渉しましょう。

貸主の方も出来るだけ揉めることは避けたい為、交渉に応じてくれる場合がほとんどのはず?です。

あなたの方でも出来るだけ円満解決できるように、自分の一方的な論理だけで押し通すことは避け、相手との交渉妥結を目指すようにしましょう。

STEP5:交渉が難航したり、問い合わせに対する貸主側からの返答がない場合は、「内容証明郵便」を送る

Free-Photos / Pixabay

どの部分について解決を図りたいのか、今まで問い合わせた内容や、やり取りなどのこれまでの経緯をまとめて「内容証明郵便」という形式で相手方に郵送します。

「内容証明郵便」とは、送った文書の内容を郵便局が証明してくれるサービスで、この後の「少額訴訟を起こす際」に証拠として提出できる書面でもあります。

料金は1200円から2000円程度と、比較的リーズナブルとなっています。

なお、「内容証明郵便」を送る際には、相手方が受け取ったことを証明できる「配達証明記録」と必ずセットで送るようにしましょう。

ここまですれば、相手にこちらの要求していることがどういう内容か、またそれを相手が、「そんなものは知らない、受け取っていない。」と言うのを防ぐことが出来ます。

「敷金返還の少額訴訟」に掛かる費用はいくら?

裁判というと、高額の費用が掛かるものというイメージがあるかと思いますが、少額訴訟の裁判費用などには、高額な費用は掛かりません。

費用の内訳としては、

1.裁判費用

2.当事者費用

3.裁判所までの交通費など

大きく3つに分かれます。

交通費を除くと、総額でも1万円前後の少額で訴訟を起こせるのが特徴です。

以下でそれぞれ詳しく、いくらぐらい掛かるのか見ていきましょう。

裁判費用

裁判費用には、裁判所を利用し裁判をするための諸費用が該当します。

その中には、「手数料」とその他の費用として「予納郵券代」があります。

「手数料」

手数料は、裁判所に訴えを起こす際に必要な費用で、相手に請求する金額によって異なります。

請求金額10万円までが手数料1000円、以降10万円上がるごとに手数料も1000円ずつ増えます。

例えば、請求金額20万円では手数料も2000円、請求金額30万円では手数料も3000円となります。

そして、少額訴訟で行えるのは、請求金額は最高でも60万円までとなっており、その場合の手数料は6000円となっています。

「予納郵券代」

予納郵券とは、あまり聞きなれない言葉ですが、あなたの訴状に基づき、裁判所から被告に対して、訴訟を起こされた概要及び、裁判(口頭弁論期日)に出廷するよう求める書面などを郵送する際に掛かる費用(切手代)をあらかじめ納付することです。

裁判に必要な郵便物を各宛てに送る為の「郵便代」と考えておけばいいでしょう。

一般的には、3000円~5000円程度で、使わず余った分については、後日返還されるので心配ありません。

当事者費用

当事者費用とは、訴訟の当事者(原告=あなた、被告=大家さん)に関して必要な費用の事を指します。この説明では、ちょっとピンとこないですよね。

具体的には、例えば、貸主が法人名義である場合、法務局にある「商業登記事項証明書」を取得する必要があり、その費用として600円が必要になったりします。

このような物を当事者費用と呼んでいます。

裁判所までの交通費など

裁判を起こすために訴状を提出する簡易裁判所は、

被告の住所地(又はあなたの旧居の住所地)を管轄する簡易裁判所でなければならないことは、次項『「管轄」裁判所の場所を確認する』のところで解説します。

近くであれば、そんなに大きな負担とはならないでしょうが、遠くに引っ越ししてしまった場合は、上記の裁判費用などより、むしろこの交通費が一番高額になってしまうかもしれません。

交通費の事も考慮しておく必要があります。

少額訴訟にあなたが勝訴すれば、被告(大家さんや不動産業者)に交通費の分も請求できるので問題ありませんが、

もしあなたが敗訴した場合は、当然自腹となり回収できませんので、裁判する時の費用対効果をよく考えたうえで、裁判所に訴状を提出するようにして下さい。

ここからが本番「敷金返還の少額訴訟」を起こす

「敷金返還の少額訴訟」とは?

succo / Pixabay

少額訴訟という制度は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる、「民事訴訟」の方法の一つです。

仮に、家賃が高額で返還を求める敷金も60万円を超える場合には利用することはできません。

その他の特徴としては、

1.審理は1回(1日)で終了し判決が即日出される為、時間が掛からない。

2.一方、審理が1回切りであるため、原告、被告、(証人がいる場合は)証人の全員が揃っていないと出来ない。

3.被告側(この場合は大家さん側)からは、原告(入居者側)を訴えること(反訴)はできない。

以上のようなことから、

1回の審理で解決できなそうな場合や、数々の証拠や証言を積み重ねなければ判断できないような、複雑な案件については通常の訴訟手続きで行う必要があります。

全体の流れなどについては、以下を参照ください。

参考:裁判所-少額訴訟

STEP1:訴訟前の準備

「訴状」の作成

まずは、以下の裁判所のホームページに行って、訴状の様式をダウンロードし、記入例に倣って必要事項を記入して、訴状を作成します。

記入例に従って書けば、そう難しいものではなく、原告被告双方の住所氏名や、住んでいた物件の概要、家賃、支払った敷金の額、そして請求金額などの基本的事項を記入します。

訴状の様式には、なぜそのような事態に至っているか、理由や経緯を書く欄は数行分しかなく、詳細は添付書類(内容証明郵便など)による説明となります。

参考:裁判所-敷金返還請求

必要書類の準備

敷金返還においては、以下の書類などが証拠書類として必要になるので揃えます。

・賃貸借契約書(無い場合は重要事項説明書や更新時の契約書)
・敷金の精算書(原状回復費用の見積書や明細書など)
・内容証明郵便と配達証明記録(事前に郵送している場合)
・入居時/退去時の汚れ・損傷具合などを証明できる写真(あればなお良い)

一つ一つ確認していきましょう。

賃貸借契約書(無い場合は重要事項説明書や更新時の契約書)

敷金返還においては、まずはこれが無いと始まりません。

賃貸借契約書には、貸主が誰であるか(大家さんもしくは不動産業者)と、住んでいた入居者があなたである旨が、甲と乙という形で、記載されています。

敷金返還の少額訴訟を起こす場合、あなたが原告、貸主が被告となり、その間に契約関係があったことを、裁判所が確認できなければ、裁判自体始められません。

また、敷金返還で揉める場合は、クリーニング代や修繕費用の大小で揉めることもありますが、特に特約条項の内容や有効性について妥当かどうかを裁判所に判断を求めることが多いかと思います。

そのようなことから、賃貸借契約書を紛失してしまった場合などは、「重要事項説明書」や最近更新した時の「更新時の契約書」でもいいので準備しましょう。

敷金の精算書(原状回復費用の見積書や明細書など)

退去立会いなどを経て、物件退去(引っ越し)後に、原状回復費用の負担割合やそれを記した明細書、または修繕工事見積書などが、あなたの新居宛てに送られてきているはずです。

元はと言えば、そこに書かれていた法外な料金や納得できない費用徴収が原因で、今回の「少額訴訟」に至っているわけです。

この書類が用意できないはずは無いでしょう。

内容証明郵便と配達証明記録(事前に郵送している場合)

内容証明郵便を配達証明記録で送っている場合には、それらを裁判所に提出します。

メリットしては、訴状には余白の都合上あくまでも「紛争内容の要点のみ」しか書くことが出来ませんが、対して内容証明郵便で送る内容は、用紙何枚にも渡って書くことが出来るため、経緯などについてもより詳しく書くことが出来ます。

口頭弁論の時に、紛争内容についての詳細まで裁判官へ説明できる利点があるので、

少額訴訟を考えている場合は、経緯説明や事態の詳細などについての「内容証明郵便」を相手方に送っておくことを是非おすすめします。
入居時/退去時の汚れ・損傷具合などを証明できる写真

入居者であるあなたの方で、写真を撮っていればベストなのですが、退去時はともかく、特に入居時は撮っていないことも多いかと思います。

無ければ無いで構いません。

STEP2:簡易裁判所に行って「訴状を提出」する

MarkThomas / Pixabay

「管轄」裁判所の場所を確認する

早速、注意点ですが、

訴状を提出する「裁判所の場所」に注意しなければなりません。

訴状を提出する裁判所は、原則として以下のどちらかである必要があります。
1.被告の住所地(大家さんもしくは不動産業者)
2.不動産(あなたの住んでいた旧居の賃貸住宅)の住所地

やっかいなのは、敷金返還で揉めている場合でも、既にあなたは新住所地の新居に引っ越ししてしまっているという点です。

近県ならまだしも、東京から大阪など遠くに引っ越ししてしまった場合は、訴状を提出しに行くだけでも、遠く旧居の住所地まで行かなければならないので、交通費もばかになりません。

なお、管轄の裁判所を間違うと、書類を持って行った段階の最初のチェックで管轄違いではねられ、別の管轄裁判所に持って行くよう言われてしまい、2度手間となってしまいます。

上の2つの住所地を元に、管轄の裁判所がどこになるのかよく確認した上で、行くようにして下さい。市区町村が異なると、簡易裁判所の「管轄」も変わる場合がよくあるので十分注意して下さい。

例えば、同じ東京都内でも、世田谷区(含む東京23区)は「東京」簡易裁判所管轄となりますが、世田谷区とお隣の狛江市の場合は、市を3つも跨いだ遠くの「立川」簡易裁判所管轄となっています。

また、各市区町村に1つ簡易裁判所があるわけではないことは上記の例からも分かるかと思います。

以下の裁判所のホームページでは、全国各都道府県ごとにお住いの市区町村の管轄裁判所を調べることが出来ます。

外部リンク:裁判所-裁判所の管轄区域(全国各都道府県ごと)

簡易裁判所に「訴状」を提出する

提出する時のポイントですが、自分で記入した訴状をそのまま受付窓口に提出すると、書類の不備により不受理や書き直しとなってしまうこともあるので、

受付窓口に提出する前に、同じ裁判所内にある「相談窓口(相談センター)」に行き、書類に不備が無いかチェックしてもらいましょう。

相談窓口での書類チェック後、修正が必要な箇所は自分で修正し、再度提出。問題無ければ、受付に行くよう指示されます。

そのまま、訴状の受付窓口に訴状及び添付書類を提出し、待つこと15分から30分ほどで、担当事務の方による内容のチェックが完了し、書類に受付印が押されると「少額訴訟事件受付票」が交付されます。失くさないように保管しておきましょう。

これで、訴状を受理してもらえたことになります。

STEP3:簡易裁判所で「訴状を受理」してもらった後

原告(あなた)側の対応

訴状の提出から数日すると、裁判実施日(口頭弁論期日)についての相談の電話が、裁判所担当書記官より掛かってきます。

概ね、訴状の提出日から1か月後あたりの期日で裁判実施をしたい旨(例:提出日が6月1日の場合、裁判は7月1日頃)が打診されるので、あなたの都合に合わせいくつかの候補日から選び、裁判を実施する日(口頭弁論期日)を決定します。

ここで裁判を実施する日(口頭弁論期日)が決定すると、後日裁判所より正式な「呼び出し状」が郵送で送られてくるので、当然「出席」という事で返送すると、特に裁判の日まで何かすることはありません。

被告(家主)側の対応

裁判所よりあなたが訴えを起こしたという「訴状」が相手の家主側に届くので、それに対して、相手によっては少額訴訟の裁判を実施せず、すぐさま和解案を出してくる場合もあるでしょうし、徹底抗戦の構えで反論の書面があなた宛てに送られ、少額訴訟の裁判に進むこともあります。

STEP4:口頭弁論期日すなわち「裁判を行う日」はどのように行動する?

12019 / Pixabay

裁判開始前(集合時間厳守)

口頭弁論期日=裁判を行う日は、指定された日時に必ず余裕をもって間に合うように行動します。目安は開始の30分前に法廷前到着です。

原告であるあなたが遅刻や無断欠席をすると、欠席裁判となりあなたの敗訴となる可能性が高くなってしまいます。よって遅刻や無断欠席は厳禁です。

当日の期日変更は、よっぽど重大な理由が無い限り原則認められません。

もし予め、やむを得ない事情により出席できないことが分かっている場合は、「期日変更の申立書」を提出することにより、口頭弁論期日の変更を願い出ることは可能です。

裁判開始

テレビドラマなどで見る一般的な裁判風景とは異なり、丸テーブルに裁判官、司法委員、書記官、原告、被告の関係者一同が座り、会社の会議のような雰囲気で行われるのが、少額訴訟裁判の様子です。

ここで、各人の役割について、簡単に説明しておきます。

裁判官:原告被告両者の意見を聞き、最終的な判決を下す人。

書記官:裁判記録を取ったり、裁判の関係書類を郵送してくれたりする事務方の人。

司法委員:和解を取り持つ仲介役の人。

原告:訴えを起こした人。(あなた)

被告:訴えられた人。(貸主である大家さんや不動産業者)

さて、裁判官の進行で裁判が始まると、順番に

原告被告ともに、事前に提出された書類の内容を元に、口頭弁論を行います。

原告被告どちらかに完全に優位な点があれば、裁判官も判決を下しやすいのですが、なにしろ口頭弁論は1日のみ。両者とも自分の立場に有利な主張を続けるため、話し合いは全くの平行線で膠着状態になることもしばしばです。

そうすると、裁判官の方から、司法委員を交えて話し合いでの解決を提案されます。

原告・被告とも別室で個別に司法委員と話しをし、和解案について話し合いを持ちます。

ここで原告・被告双方で和解案が妥結すると、和解という形で裁判終了。

もし、司法委員との話し合いで和解案が妥結しない場合は、もう一度法廷に戻され、今度は裁判官から和解できないか提案されます。裁判官としては、白黒つける判決文は書きたがらない傾向がある事を覚えておいて下さい。

どうしても和解が成立しない場合は、最終的に裁判官から判決が言い渡されます。

和解と判決

TeroVesalainen / Pixabay

和解が成立した場合は、裁判官より和解内容が読み上げられ終了。

両者が和解に至らない場合は、概ね和解案を蹴った方の心証が悪くなり、敗訴という判決が出されます。

少額訴訟裁判のまとめ

少額訴訟の場合では、どちらかの完全勝利ということはあまりなく、原告被告共に、ある範囲内での和解案を提示される場合がほとんどです。

原告であるあなたも、その和解案に完全に納得できない部分もあるかもしれませんが、出来る限り「和解案を受け入れ」、丸く円満解決するようにする方が得策です。

あまりにも納得できない場合は、和解を断ることも可能ですが、そうなると、原告であるあなたの敗訴は確定したも同然です。

少額訴訟においては、「和解がゴール」と考え、裁判に臨んで下さい。

和解ではなく、完全勝利を目指すのであれば、最初から「少額訴訟」ではなく「通常訴訟」を選んだ方がいいでしょう。

但し、審理も何度も行われるので多くの時間が裁判に取られるのを覚悟しなければなりません。

STEP5:判決が出た後日

裁判が終わると、後日和解した内容が記された書類もしくは、判決内容の書類が裁判所より送られてきます。

その内容により、以降の対応を考えて下さい。

あなたが和解案を了承せず敗訴となった場合、次に「通常訴訟」を考えるならば準備を進めて下さい。

和解案により、いついつまでに敷金返還分などがあなたの口座に振り込まれ、敷金返還を成し遂げたら、それで本来の目的は達成です。

最後に

裁判というとすごく大変なイメージがあったかもしれませんが、「敷金返還の少額訴訟」については実はそんなに難しくないことが分かってもらえたかと思います。

一部の大家さんや不動産業者の中には、悪質な者もいて、敷金返還に応じないのは当然(丸儲け)ぐらいに考えている者もいます。

そのようなおかしな事をする人に対して、あなたも法律を武器に戦えることを知ってください。敷金返金トラブルで泣き寝入りをしない為に。

今回の「敷金返還の少額訴訟」についての記事は、専門的な内容も多々あったため、以下のサイトの情報を参考にさせていただきました。

敷金返還.com「意外とお手軽!!敷金返還に役立つ少額訴訟の流れや手続き【保存版】

あなたの弁護士「敷金返還請求とは|少額訴訟の手続きとトラブル解決手順」

ワンルーム投資スクール「償却敷金を取りかえせ!少額訴訟で償却敷金の返還請求をしました(裁判開始~和解まで)

についてです。

こちらの記事もあわせてどうぞ。