引っ越しでは何かと出費がかさみ、お金が出ていく一方です。
ところが、引っ越しにおいて、あなたにお金が入ってくる(得られる)チャンスは、この『敷金返還』のワンチャンスしかありません。
他には、各種保険を中途解約した時にもらえる「解約返戻金」ぐらいしか思い当たりません。
今回は、
引っ越し費用(引っ越し業者に払う分)=『出ていく分(マイナス分)』
と共に、経費の二大削減ポイントである、
敷金=『入ってくる分(プラスになる分)』
をいかに多く返してもらうか?ということで、
『敷金を多く取り戻すコツ。』をご紹介したいと思います。
あなたも是非実践して、引っ越し収支をプラス方向に持っていきましょう。
退去時の掃除と「原状回復」について。ガイドラインを知っておこう!
「敷金」と「原状回復」

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賃貸物件の場合、あなたが入居する際に「敷金」、通常家賃の1~2か月分を払ったことを覚えていると思います。
この「敷金」とは、入居中に家賃の滞納があった場合にそこから引かれたり、
退去する際に部屋を「原状回復」させるために必要な原資となります。
民法では、敷金について
「賃料その他の賃貸借契約上の様々な債務を担保する目的で賃借人(注釈:ちんしゃくにん=賃料を払って借りる人:入居者⇒「あなた」のこと)が賃貸人(注釈:ちんたいにん=賃料をもらって貸す人:不動産業者や大家さん)に対して交付する停止条件付きの返済債務を伴う金銭」
と記載されています。
ちなみに、貸借人(たいしゃくにん)と言った場合は、貸す人、借りる人両方を指す言葉です。
その為、民法の定義に従えば、敷金とはあくまで「担保」であって、何も問題なければ、全額返ってくるはずのお金です。
しかし現実には全額戻ってくることはほとんどありません。
それはなぜでしょうか?
ここに、原状回復の定義(解釈の違い)が、不動産業者(大家さん)により異なるからです。
1990年代までは、不動産業者(大家さん)になんやかんやと理由を付けれられ、敷金からガッポリ引かれることも多く、敷金返還についてのトラブルが多発していました。
その状況を重く見た国土交通省は1998年に、
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表しました。
これ以降、ある一定の目安が設けられました。
これからお話しする目安(ガイドライン)は必ず押さえておきましょう。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

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1998年に国土交通省が発表した、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の中には、
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
と記されています。
つまり、
よって、生活しているうえで通常やむを得ない(経年劣化)と判断されるもの、
しかし、猫を飼っていて、柱で爪とぎをするものだから、柱を傷だらけにしてしまった。
子供が障子やふすまを破いてしまったなどの場合は、通常の使用ではないので、これらを修復するのは「原状回復」に当たります。
そして、
しかし、ガイドラインはあくまでガイドラインであって、強制力はありません。その為、昔からの慣習もあり、ハウスクリーニング費用は、契約書に「借り主負担」が明記されていることもあります。
ガイドラインより契約書の内容が優先されるので、契約書の内容に「賃貸特約事項」が盛り込まれていないか、その内容はどうなっているのか、契約前には必ず確認しておくようにしましょう。(引っ越し前の今となっては、遅いかもしれませんが...)
だったら、普通に生活していて汚れた(劣化した)んだから、そのままで退去してしまえばいいのかというと、そうではありません。
⇒敷金全額返還は無理でも、そこからハウスクリーニング費用のみを引いた額に抑えることは可能です。
退去時は絶対きれいにしておいた方が、実際に汚れているかどうかだけではなく、退去時に綺麗になっていれば、住んでいた間も綺麗に、大事に使っていてくれたのだなという「心理的」作用が働き、実際の綺麗度以上の印象の良さが残るのは間違いありません。
そうすると、確実に敷金の戻りは良くなることでしょう。
この時は、退去日引き渡しの時(業者のハウスクリーニング前)に立ち会ってもらった不動産業者の方が仰った
という言葉がとても印象に残っています。
その為、ここから先では、
敷金の戻りをよくするための、退去時の掃除のコツ(ツボ)をご紹介したいと思います。
もし長期間、油汚れやカビ等を放置していて、自分で掃除できるレベルを超えているという場合には、素直にプロの業者に掃除を依頼しましょう。
その方が、自分で掃除をした挙句、やっぱり汚れが落ちず敷金から引かれるのか~。という事も無く時間も労力も無駄になりません。
・1R/1K(25㎡未満)なら、料金29,700円
・1LDK/2DK(40㎡未満)なら、料金56,100円
「敷金を多く取り戻すコツ」は退去時の掃除!きれいに汚れを落とす為の場所ごとの掃除方法を紹介

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故意・過失、その他通常の使用を超えるような使用が無い前提で考えると、
日常の手入れが行われていない具体例を挙げると、
これら、
以上のポイントとなる箇所を綺麗にしておくだけでも、退去時の印象は良くなります。
別の言い方をすると、
ポイントとなる箇所が分かったところで、それぞれの場所を綺麗にするには、具体的にどのようにすればいいかを紹介しておきます。
①台所回りの掃除
軽い油汚れには、中性洗剤で。
しつこい油汚れには、オレンジ由来成分(オレンジオイル)配合の洗浄剤やアルカリ性の洗剤(「重曹」もアルカリ性です。)が効きます。
しばらく漬けおきしておくと、さらに効果倍増。力を入れてこすったりという手間も省けます。
但し、強力なアルカリ性の物は、素手で作業をすると手肌が荒れてしまうので、ゴム手袋を着用するのは必須です。また、アルカリはアルミを溶かしてしまうなど素材を傷める可能性があり、取り扱いには注意が必要です。
中には電解水などナノテクを使い、水100%で肌にも環境にも優しい製品もあります。
②水回りの掃除

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水回りの汚れには、ザラザラとした水垢、カビ菌による黒っぽい汚れ(黒ずみ)、ヌメヌメするピンク色の細菌(酵母)汚れなど、原因も現象も様々です。
汚れの種類に応じた洗剤選びと予防法が重要です。
(1)水垢汚れ
キッチンのシンクや風呂場の浴槽にできるザラザラとした水垢(アルカリ性)は、水道水に含まれる「カルシウム」分が石灰化する(固まる)ことで発生します。鍾乳洞の鍾乳石も同じです。
綺麗にするには方法が2つあり、1つは物理的に削って落としてしまう方法。これには研磨剤配合のクレンザーや重曹、メラミンスポンジを使う方法があります。
もう一つは、アルカリ性と反対の酸性のクエン酸やお酢を使う方法。クエン酸の場合、500mlの水に対しクエン酸を小さじ2杯程度を入れてよく溶かし、スプレーボトルに入れて使います。
このクエン酸液を綺麗にしたい箇所にスプレーし、10分程置いた後に拭き取ります。
まるで顔の美顔パックをするようにして、1時間以上(場合によっては1晩)放置しておくと、アルカリと酸が反応して石灰分が柔らかくなり、簡単に汚れを落とすことが出来るようになります。
特に、蛇口回りと台所のシンク(ステンレス部分)を顔が映るぐらいピカピカにしておくと、退去立会い時の印象アップです。
一流ホテルの水回りはここもピカピカに掃除されています。
(2)カビ菌による黒ずみ汚れ
カビ菌による黒っぽい汚れ(黒ずみ)が発生するのは、洗浄成分のカスや皮脂などを栄養分として、カビが成長するからです。
これを防ぐには、シャワーや浴槽を使った後に、カビ菌の栄養となる洗浄成分や皮脂をよく洗い流し、こまめに掃除しておくことが大事です。
(3)ピンク色の細菌(酵母)汚れ
ピンク色の細菌(酵母)汚れは、ロドトルラという名称の酵母菌によるものです。
(4)トイレの尿石(アルカリ性)汚れ
さらに厄介なのは、トイレの尿石(アルカリ性)による汚れです。
これを落とすには、アルカリ性と反対の酸性洗剤を使うのが一般的ですが、酸性洗剤はツンとくるにおいや目への刺激も強いので、
そんな場合には効果は弱くなりますが、先に出た「クエン酸水」や「お酢」を利用すると良いでしょう。
最近では、表面にフッ素樹脂加工を施すことにより汚れをつきにくくし、日頃の掃除の手間を軽減する製品も出ています。ぜひ使ってみてください。
③床面の掃除

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板張りのフローリングの場合、色あせに対しては、フローリング専用WAXで色艶を回復させることが出来ます。
日頃の掃除の時は、フローリング用のお掃除シート(ウエットタイプ)で拭くか、中性洗剤を溶かした液を含ませた雑巾を固く絞り水拭きします。
目立つような深めの傷がある場合は、専用のクレヨンを塗り込んだり、充填式の補修材などで、補修しましょう。
④壁面の掃除

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画鋲や釘などで開いた穴は、シール材やパテなどで埋めた後、壁の色に合った色で塗り補修します。
小さい子供が、クレヨンで壁に落書きした場合は、落書きのところにドライヤーをちょっと距離を離して低温の熱を加えると、成分の油分が溶け柔らかくなるので、それをティッシュなどで吸い取るようにすると、だいたい落ちます。残りは、中性洗剤を馴染ませながら水拭きすると、きれいになります。
その為、敷金を気にするのであれば、室内での喫煙は避けた方が良いでしょう。
最後に
掃除など完璧に綺麗にして明け渡すと、敷金の返礼は多いですが、時間がないならそのままにしてしまうのも仕方がないこと。
「ここまでしかやらない(できない)。」というデッドラインの設定(一種の割り切り)も大事です。
また、もしあなたの納得のいかない、修繕費や掃除費が敷金から引かれていた場合は、返還額および内容について、大家さんや不動産会社と話し合いましょう。
つい最近2018年12月16日に札幌で起こった、大規模なガス爆発事故。
この事故原因を調査する中で、なんと、某不動産会社が「消臭・抗菌代」と称して、ただのスプレーに入居者から1万円も取っていたという事実が発覚しています。
訳が分からないものに、費用を払わされることが絶対無いように、私たち消費者は、気を引き締めて掛かりましょう。
情報ソース:J-CASTニュース
敷金返還についての具体的なトラブル対処法及び予防法については、以下別記事にて細部まで紹介しています。
『賃貸物件引っ越し時の退去立会いのコツ。敷金返金トラブルを防ぐために』
『敷金返金トラブル時の切り札。「敷金返還の少額訴訟」を行う方法』
『賃貸物件に引っ越しする時、失敗しない敷金礼金ゼロ物件の選び方』
『賃貸契約、関東の敷金/礼金とは違う、関西の保証金/敷引き制度とは?』
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